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いきいき 2005年11月号掲載
連載「未来への視点」第18回
小売業のハイブリッド戦略

 ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせて動く車、ハイブリッドカーの市場が拡大していますが、私たちの身近な存在である小売業でも、「ハイブリッド戦略」が目立ってきています。


ニュータイプの登場

 小売業には、百貨店やスーパー、コンビニなど、さまざまなタイプ、業態の店舗が存在しています。小売業の「ハイブリッド戦略」というのは、これらの多彩な業態がそれぞれに持っている独自の優位性や機能を組み合わせることで、より優れた店舗を生み出そうという発想です。
 その典型と言えるのが、近年急成長中の「ショップ99」の店舗です。開設される場所や店の規模はコンビニと同様で、長時間営業もしています。ですが、扱っているのは、食品スーパーのような生鮮食品が中心です。さらに、99円の均一価格の販売で、百円ショップ的な要素も持っているのです。
 この新しいタイプの店が多くの消費者を惹きつけ、大手のコンビニチェーンも、同じような店舗の展開をはじめています。


百貨店やスーパーのハイブリッド戦略

 そうした新しいタイプの店舗だけでなく、スーパーや百貨店など、以前からあるタイプの店でも、ハイブリッド戦略が展開されています。たとえば、巨大な売場を持つ百貨店や、ジャスコ、イトーヨーカ堂などのような総合スーパー(GMS)の場合には、消費者を惹きつける有力な専門店を自社店舗のテナントとして迎え入れることで、専門店の魅力や機能を取り込もうとしています。映画館や娯楽施設を組み込むのも、その一環です。
 また、食品スーパーなどが進めている長時間営業化は、元々はコンビニが武器にしていた特性を取り込んだものですし、近年目立ってきている食品スーパーの接客サービスの強化や、コンビニの配達サービスは、古くからの個人商店の機能を、それぞれの店舗に取り込む試みと言えるでしょう。これらも立派なハイブリッド戦略です。


高まる多様化への期待

 かつて、スーパーマーケットが登場してきたときにはセルフサービスとチェーン店システム、コンビニの場合には長時間営業とフランチャイズ・システムと、小売業界での画期的な新機軸を土台にすることで、それらを展開する企業は大企業に成長していきました。
 それに対してハイブリッド戦略の展開は、既に存在している技術やコンセプトの組み合わせが出発点になっています。そのため、一つ一つのスタイルが大企業に育っていくことは少ないかもしれませんが、短期間で、きわめて多彩なスタイルの店舗やサービスが、私たち消費者の前に提示される可能性もありそうです。
 そんな視点で、私たちの身近なところで展開される小売業の変化を見ていくのも面白いのではないでしょうか。


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