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いきいき 2005年5月号掲載
連載「未来への視点」第12回
誰もが情報発信する時代

 ここ数年で、急速に普及したインターネットは、もう私たちの生活になくてはならない存在になりました。そこからは、新しい文化を生まれる可能性もある一方で、やっかいな問題も膨らんできつつあります。


増大するネット利用者

 総務省の調査によると、1997年には総人口の1割程度だったインターネット利用者は、その後、急速に増えて、2003年には6割を超えるまでになりました。数でいえば約8千万人です。高齢層でも、ネットを使う目的でパソコンをはじめる人が増えているようです。今やインターネットは、日本人の生活に完全に溶け込んでいると言えるでしょう。
 その背景には、携帯電話からアクセスできるようになったことや、新規参入企業が低価格で高速の常時接続サービスを開始して、ネットが一段と使いやすくなったことがあるでしょう。そして「家族や友人が使っているから」という連鎖が働いたことで、一気に普及が進んだものと考えられます。


情報発信もより簡単に

 インターネットを使う目的としては、情報収集と連絡手段としてのメールの利用が大多数ですが、ここにきて目立っているのは、ネットを情報発信に使う人が急速に増えていることです。ホームページを作っている人は、すでに数百万人の規模に達しており、その内容も、趣味の記録や日記、自作の小説や写真、絵画、音楽など、実に多彩です。
 ネット上では、誰でも自由に情報を発信できます。GoogleやYAHOO!などの検索サービスが強力になったおかげで、発信した情報が多くの人の目に触れやすくもなりました。加えて、従来よりもはるかに簡単にホームページを作れる「ブログ」のサービスが定着したことで、本当に、誰もが不特定多数のネットユーザーに向けて情報を発信できる時代になってきたのです。


入り混じる期待と不安

 多くの人に自分の考えや感じたことを伝えたり、作品を見てもらうのは、なかなか楽しいことです。コメントをもらえたりすれば、なおさらです。従来は、その楽しみは学者や作家、芸術家など、一握りの人だけに許された特権でした。しかし今、インターネットの普及は、その楽しみの一端を、すべての人に開放したのです。そこからは新しい文化が生まれる可能性もあります。
 ですが、情報を発信する人が増えれば、ネットに流れるウソやデマ、誹謗、中傷といった望ましくない情報も増えるでしょうし、ネットを通じたやりとりがトラブルに発展するケースも多くなりそうです。これまでにも指摘されてきた、インターネットの暗い部分が、一段と広がるわけです。
 インターネットの存在感はこれからさらに大きくなるでしょう。その先には何が待っているのか。今はまだ、期待と不安が入り混じった状況です。


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