Works
いきいき 2005年3月号掲載
連載「未来への視点」第10回
アメリカ経済を支える「貧困エンジン」

 最近の世界経済は、アメリカと中国が引っ張って成長する形が続いています。発展の途上にある中国はともかく、豊かな先進国でありながら成長力を維持しているアメリカは、きわめて特殊な国と位置付けられます。


豊かさと成長力の引き換え

 一般的に言って、経済が未成熟な国の場合には、先進国というモデルがあるので、どうすれば産業を発展させられるかとか、どうやったら生活を豊かにできるのかといったことが明確で、急速な経済成長を実現しやすいものです。現在の中国がそうですし、日本でも高度成長期まではそうでした。
 逆に、今の日本やヨーロッパの国々のように経済が成熟すると、人々は豊かになって切実な欲求は満たされてきますし、先行するモデルもないので、高成長は難しくなります。豊かさと引き換えに、成長力は失われてしまうわけです。
 ところがアメリカの場合は、日本やヨーロッパの国々と並ぶ豊かな国でありながら、今でも高い成長力を維持しているのです。


貧困をエンジンにする仕組み

 移民の国として成立したアメリカは、世界各地からの貧しい移民を受け入れ続けてきたために、常に貧しい人が人口のかなりの部分を占めていました。これは、豊かな先進国のなかに、貧しいけれども成長力のある発展途上の国を組み込んでいるようなものです。
 貧しい移民はアメリカで仕事を見つけて一生懸命に働き、その稼ぎを消費に回すことで豊かな暮らしを実現していきました。アメリカは、そうした貧困層の活力をエンジンにすることで、今でも成長力を維持しているのです。
 この仕組みは、アメリカ自身の成長力の維持と同時に、国外から取り込んだ貧困を解消することで、世界全体の貧困問題の解消に貢献するものでもあります。いわば「貧困の輸入」による国際貢献です。


日本も移民を受け入れる?

 近年では日本でも、高齢化の進行や成長の鈍化を背景に、アメリカのように、移民をもっと受け入れたらどうかという話が出てきています。ですが、アメリカのやり方も良いことばかりではありません。貧しい人々の存在は、都市のスラム化や犯罪の増加、社会不安の高まりといった形で、長い間、アメリカを苦しめてきたことを見逃すわけにはいきません。
 これは、アメリカの仕組みが日本に比べて良いとか悪いとかいう話ではありません。アメリカにはアメリカの、日本には日本のやり方があるはずです。国際貢献にしても、日本の場合には途上国への資金援助や技術協力、いわば「豊かさの輸出」で成果をあげてきました。今後は、アメリカの良い点をしっかり研究したうえで、日本にふさわしい仕組みを考えていくべきでしょう。


関連レポート

■「豊かさ」と「活力」と−成熟化経済と人口大国の行方−
 (The World Compass 2006年2月号掲載)
■米国経済は巡航速度に向けてソフトランディングへ−「貧困層」の存在がダイナミズムの源泉−
 (商品先物市場 2004年11月号掲載)
■「貧困の輸入」で活力を維持する米国の消費市場
 (チェーンストアエイジ 2004年4月15日号掲載)
■経済の活力をどう確保するか−世界に広がる「貧困エンジン」のメカニズム−
 (読売ADリポートojo(連載)2003年12月号掲載)
■「豊かさ」のなかの停滞を背景に進む消費市場の不安定化
 (チェーンストアエイジ 2003年12月15日号掲載)
■米国経済−繁栄と貧困と−
 (The World Compass 2000年10月号掲載)


Works総リスト
<< TOPページへ戻る
<< アンケートにご協力ください
Copyright(C)2003