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いきいき 2005年2月号掲載
連載「未来への視点」第9回
新しい農業の可能性

 日本の農業は、輸入農産物との競争などもあって、危機的な状況にあるといわれていますが、単に農産物を提供するだけではない、まったく新しいタイプの農業が生まれる可能性も浮かび上がってきています。


DASH村の企画

 日本テレビ系列で放送されている「ザ!鉄腕!DASH!!」という人気番組があります。そのなかで、アイドルグループ「TOKIO」のメンバーが、山間の廃村を舞台に自分たちの手で四季折々の農作業や家づくり、村づくりに挑戦する「DASH村」という企画が人気を集めています。
 この企画は、近隣の人々の協力と、年季を積んだ「プロ」の指導のもとで進められ、もう6年目に入っています。田んぼや畑を作る。作物を育てる。それを材料にして昔ながらの食べ物を作る。もちろん成功ばかりではありません。台風や病気で作物がダメになることなどはしょっちゅうです。そうした出来事の一つひとつが物語を生み、農業の難しさと同時に、その尊さや魅力を伝えてくれています。


農業の潜在的魅力

 DASH村の企画には、さまざまな世代の人々に訴えかける多様な要素が含まれています。年配の世代には、昔ながらの農村の暮らしに対するノスタルジーがあるでしょう。若い人たちには、遊びとしての農作業、遊び場としての農村という発想が新鮮に受け止められています。そして子供たちに対しては、農作物を作る過程や、それにまつわる昔ながらの知恵、文化を楽しく伝える、教育的な価値の高いコンテンツになっています。
 そうした文化性、娯楽性、教育性といった特性は、現代の農業や農村そのものが潜在的にもっている魅力といえるでしょう。農業を娯楽としてとらえるなどというと、本職の農業の方には叱られるかもしれませんが、こうした特性のなかに、日本の農業の復活に向けた可能性が潜んでいるのです。


農業の新展開

 日本で農業を仕事にしている人は、ずっと減り続けていて、今では400万人を割っています。最近では、生産コストの低い海外の農産物との競争も厳しくなっています。ですが、ここでみてきたような、農業の潜在的な魅力を活かすことができれば、日本の農業はこれまでとは違った形で発展していくことも十分考えられます。
 それは、一般の消費者に農業を楽しむ場を提供したり、教育の一環として子供たちに農村での生活を体験させたり、といった事業です。観光業や旅行業、教育産業との連携も考えられます。そうして生まれる新しい農業は、私たちの文化の継承や景観の保全にも、大きな意味をもってくるでしょう。


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