Works
いきいき 2004年10月号掲載
連載「未来への視点」第5回
「ちょっと贅沢」の効能

 ちょっと贅沢。現代の流行をとらえるキーワードです。外車や高級ブランドの商品ではありません。少しがんばれば手に入るくらいの贅沢が、私たちの暮らしのなかで、大きな意味を持つようになってきています。


高価なデザート

 同僚の女性たちの評判を聞いて、銀座の高級チョコレート店に併設されたカフェに、パフェを食べに行ってきました。一人前1,600円。普通の喫茶店の2倍以上のお値段ですが、これが相当な人気で連日完売。遅れて行くと売り切れで食べられません。
 私が行ったときも店内はほぼ満席でしたが、私や私の同僚も含めて、別にお金持ちばかりが来ているわけではありません。私などは「ものは試し」という感じでしたが、なかには日々の食費を抑えてでも、月に一度はその店でパフェを食べる、という熱心なファンも少なくないそうです。
 パフェが1,600円と思うと高く感じますが、お酒を飲みに行ったりレストランで食事したりするよりも安い値段で、けっこう贅沢なひと時を味わえるわけですから、意外とお得なのかもしれません。


心を満たす「ちょっとした贅沢」

 考えてみると、お米や、パン、お菓子、お酒、あるいは雑貨や小物など、身近で手軽なものが中心ですが、少し高め、少し贅沢な品物や店が人気になるケースが増えています。いわゆる「デパ地下(デパートの地下の食品売り場)」や、それに続く「ホテイチ(ホテルの1階の惣菜売り場)」のブームもそうです。
 ちょっとがんばれば手に入れられる程度のちょっとした贅沢で、どれだけ心が満たされるかということに、多くの人々が気付いているのです。前には「一点豪華主義」という言葉がありましたが、最近では「プチ・ゴージャス」とか「ニュー・ラグジュアリー」という言葉が使われています。


アンバランスは現代の知恵

 これらはすべて、日々の生活に、あえて贅沢と節約というアンバランスを持ち込む暮らし方です。アンバランスだからこそ、ちょっとした贅沢は自分のためのイベントとして、がんばった自分へのご褒美や、疲れた自分への励ましになるのです。不景気や社会が不安定なときほど、意外に贅沢な品物や店が流行るのもそのためです。
 今の時代は、物質的には豊かになった一方で、日々の暮らしや仕事のなかで感じる不安やストレスも膨らんでいます。「ちょっと贅沢」を盛り込んだアンバランスな暮らし方は、そんな時代を生きていくための知恵といえるのではないでしょうか。


関連レポート

■消費者を動かす力−脱・安売り競争時代のキーワード−
 (チェーンストアエイジ 2004年10月1日号掲載)
■「豊かさ」のなかの停滞を背景に進む消費市場の不安定化
 (チェーンストアエイジ 2003年12月15日号掲載)


Works総リスト
<< TOPページへ戻る
<< アンケートにご協力ください
Copyright(C)2003