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ダイヤモンド・ホームセンター 2003年6-7月号掲載
最新版商業統計発表−「ホームセンター」の飛躍をどう見るか−

 本年3月、経済産業省から平成14年の商業統計が発表された。日本の商業の現状とトレンドを最も包括的に捉えた重要な統計である。とくに、本誌(ダイヤモンド・ホームセンター誌)の読者にとって大きな意味を持つと思われるのは、業態別の統計において「ホームセンター」の区分が初めて設定されたことだろう。
 これは、HCという業態が公的に認知されたことの表れであると同時に、GMSや食品スーパー、コンビニなどと同じベースでHCの動向を把握することが可能になるということでもある。
(本稿では、一般的な意味でホームセンターを表す場合にはHC、商業統計の業態分類としてはカッコ付きで「ホームセンター」と書き分けている)


意外な調査結果

 まずは、商業統計における「ホームセンター」のデータをご覧いただこう(図表1)。99年に実施された前回調査に比べて、店舗数、就業者数で5割、売場面積で6割、売上高でも3割の大幅増。小売業全体では売上高で6パーセント減というきわめて厳しい環境下で、まさに飛躍とさえいえる成長振りである。この結果をストレートに受け取った報道では「流通の新4番打者」(3月20日付け日経MJ)という表現も見られた。

図表.1 商業統計における「ホームセンター」の概況
  2002年調査 前回調査比
事業所数 4,356店 49.6%増
年間商品販売額 3.07兆円 27.9%増
就業者数 12万8千人 51.6%増
売場面積 839万u 59.7%増
・前回調査比は、99年調査結果からの増減率

 しかし、このデータは、本誌の熱心な読者には、かなり意外なものではなかっただろうか。というのも、かねてよりお伝えしている本誌調査の結果とかけ離れているからだ。改めて、本誌調査のデータを見ると(図表2)、売上高、店舗数ともに、わずか5パーセントほどの伸びに過ぎない(本表では、図表1で示した商業統計と時期的にもっとも近い2001年度の実績と、98年度からの伸び率を示している)。これを、いわゆる「勝ち組」の企業が積極出店を続ける一方で、競争に敗れた企業、店舗の淘汰が進み、全体ではほぼ横ばいになっていると解釈していたのでる。
 飛躍と横ばい。このまったく様相を異にする二つの調査結果。この違いはいったい何に起因しているのだろうか。そして私たちは、HCの現状をどのように理解すれば良いのだろうか。

図表.2 ダイヤモンド・ホームセンター誌の調査結果
  2001年度末 1998年度末 増減率
企業数 376社 394社 4.6%減
店舗数 3,370店 3,218店 4.7%増
売上高 3.53兆円 3.35兆円 5.3%増


商業統計における「ホームセンター」

 調査結果がここまで割れた原因として、まず考えられるのは、HCの捉え方、定義の仕方の違いだろう。
 本誌の調査は、大雑把に言ってしまうと、業界内で多くの人がHCだと位置付けている企業を対象として実施されている。いわばコンセンサスに依拠した捉え方で、循環論法的ではあるが「HCと思われているのがHC」という理解である。調査対象は、最大手のカインズ、コーナン商事、ホーマックなどをはじめ400社近く、2001年度の売上高の総計は3兆5千億円となっている。
 コンセンサスに基づく捉え方は、柔軟で現実的な反面、恣意的で公的な統計調査には不向きである。そのため、公式統計である商業統計では、恣意性を排除するために明確な条件を定め、店舗ごとに「ホームセンター」かそうでないかを峻別している。言い換えれば、今回の商業統計で、統計作成のためとはいえ、初めて「ホームセンター」の公的な定義が示されたということだ。その定義は、かなりややこしいが、ここで簡単に整理してみよう。それにはまず、「ホームセンター」を含む「住関連スーパー」の業態定義から示した方がわかりやすい。住関連スーパーの条件は三つある。
 第一に、売場の半分以上でセルフサービス方式をとっていること。これは総合スーパーや食品スーパー、衣料品スーパー、コンビニ、ドラッグストアにも共通する条件である。
 第二に、取扱商品のうち住関連商品が70パーセント以上を占めていること。ただ、ここで言う「住関連商品」とは、家具や家電はもちろん、自動車やペット、医薬品、書籍なども含まれる。要するに「食料品と衣料品以外の商品すべて」という意味である。
 第三に、売場面積が250u以上あること。
 この三つをすべて満たす店舗が「住関連スーパー」として分類されるわけだが、これだけでは混乱しそうなので、具体的なケースをあげて考えてみよう。まず、大型の家電店や家具店のケース。これらは売場の大部分が対面販売であるから、住関連スーパーには分類されず、「専門店」に位置付けられる。次に、いわゆるディスカウント・ストア。これは、商品構成が問題になる。食料品、衣料品のウェイトが大きい店舗は「総合スーパー」に分類される一方、住関連のウェイトが大きければ「住関連スーパー」ということになる。100円ショップなどの場合も同様だ。
 これで「住関連スーパー」のイメージがつかめただろうか。これを押さえた上で、いよいよ「ホームセンター」の定義である。「ホームセンター」とは、住関連スーパーのうち、金物と荒物、種子・苗の取扱が合計で70パーセントを下回っている店舗と規定されている。つまり、住関連スーパーのうち大型の金物店、荒物店、種苗店を除いたものが「ホームセンター」ということになる。


明瞭でないHCのイメージ

 商業統計の定める定義は、確かに明確ではあるが、あくまでも統計データを作成する便宜上の定義であって、これで「ホームセンター」のイメージが鮮明になるわけではない。それは、業態としてのコンセプトにまったく触れられていないからだ。
 「何を売る店か」という切り口での分析から出発した商業統計にも、業態別の統計、すなわち「どう売るか」の切り口が導入されると、業態の定義として、スーパーでは「セルフサービス」、コンビニの場合には「長時間営業」という、それぞれの業態を特徴付けるコア・コンセプトが盛り込まれた。今回調査で「ホームセンター」と並んで新たに設定された「ドラッグストア」の場合にも、スーパーやコンビニほど簡潔ではないが、「医薬品と化粧品をセルフサービスで販売する店舗」というコンセプトが明らかにされている。
 しかし、「ホームセンター」の場合には、そうしたコンセプトは盛り込まれず、消去法的な定義付けに終始している。スーパーのなかで総合スーパーでも衣料品スーパーでも食品スーパーでもない「住関連スーパー」。そこから、さらに金物、荒物、種苗のウェイトの大きい店を除くという形で、引き算に引き算を重ねた残りの部分が「ホームセンター」とされているのである。
 この消去法的な定義は、ある意味では業界としてのHCの現状を反映したものだと言うこともできる。欧米から持ち込んだコンセプトをベースにDIY関連の大型専門店、あるいは専門スーパーとしてスタートした日本のHCであるが、その進化の方向は一様ではなかった。現在では、欧米のHCと同様にDIYに特化したタイプの店舗もあれば、日用雑貨や消耗品のウェイトの大きいバラエティストア的な店舗もある。店舗規模でみても、売場面積500u程度の小型店から4万u規模の巨艦店まで実に多様だ。そうした多様さを前に、業界や研究者、ウォッチャーの間でも、HCのコアとなるコンセプトとは何なのか、いまだにコンセンサスが形成されていない。
 HCの店舗フォーマットのバリエーションは、GMSや食品スーパー、コンビニ、ドラッグストアなど、どの業態と比べても圧倒的に豊富である。これは、逆にいえば、一つの業態として明瞭なイメージを形成しにくいということである。この現実が、商業統計における「ホームセンター」の定義が消去法的なものにならざるを得なかった背景となっている。


未確認成長セクターの存在

 分析者にとってはともかく、実際にビジネスを展開する立場からすると、定義の問題はさほど重要ではないだろう。顧客に喜んでもらい、企業として成長し収益をあげることができれば、それで何の問題もない。ただ、ビジネスとしての成功を目指して戦略を考えていくうえでは、目指すべき店舗の性格や形態を明確にしておくことは欠かせない。HCの定義は重要ではないが、成功するためのコンセプトやフォーマットを明らかにすることには意味がある。
 その意味で、商業統計と本誌調査の食い違いは、重要な示唆を含んでいる可能性がある。二つの調査結果の大きな乖離がHCの定義の違いよるものだとすると、本誌調査が対象としていない企業のなかに、商業統計上の「ホームセンター」の飛躍の要因となった急成長企業が潜んでいるか、多くの企業が新たに参入してきているか、ということになる。いずれにせよ、本誌調査で捉えていない未確認の成長セクターが存在しているということだ。
 それが具体的にどんな企業のどういう店舗なのかは、3月に発表された速報データだけでは把握し難いが、本誌調査の対象外であることを考えると、業界の基準でHCと呼べるフォーマットではない可能性が高い。しかし、その未確認の成長セクターが、どのようなコンセプト、どのようなフォーマットの店舗なのかを明らかにしていくことは、成熟期を迎えようとしているHC企業が、次の成長戦略を描いていくうえで、大きな意義を持つものと考えられる。
 そうした認識の下では、今後、未確認の成長セクターの洗い出しが課題となる。そのヒントは、今後順次発表される商業統計の詳細なデータからも得られるだろう。未確認の成長セクターの存在を前提としたうえで、従来以上に視野を広げた情報収集、分析が必要になりそうだ。


関連レポート

■商業統計を読む−GMSの調整は最終局面、SMは淘汰の時代が本格化−
 (チェーンストアエイジ 2004年4月1日号掲載)


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